管理会計とキャッシュ・フロー

 基本小委の「公会計に関する基本的考え方」では、「2.公会計の意義・目的」の「(2)企業会計の目的」で、唐突という感じで「他方、企業内部で作成される予算や計画は、企業の内部管理を目的として、各種の予測や仮定を活用し、事前の経営上の意思決定や部門ごとの業績評価に用いられるものであり、近年においては、このような企業における管理会計の重要性が認識されている。」という文章が出てくる。

 これは、現金ベースでの管理も必要であるという含意を持たせようとしたものとも考えられる。

 ちなみに、櫻井通晴著「管理会計(第二版)」(同文館 平成12年)では、次のような記載がある。
「会計上の利益は、利益操作の余地がある。そのため、真の業績が評価できないときがある。親会社にとって、子会社が粉飾しているか否かは、キャッシュ・フロー情報を併せてチェックすることによってはじめて発見できることが少なくない。連結の対象が海外であるときには、会計制度の異なる枠組みのなかで算定された利益を合算してみても、信頼できる情報とはなりえない。会計上の利益がオピニオン(意見)であるとすれば、キャッシュ・フローは事実である。それゆえ、会計上の利益はキャッシュ・フロー情報によって補足される必要がある。」(57−58頁)
「ところが問題は、期間損益の計算結果は財務諸表の作成や経営活動の業績評価のためには合理的であっても、意思決定や経営戦略への役立ちには限界があることにある。」(61頁)

 ここで対比されているのは、財務会計で用いられる発生主義の危険性と単式簿記の基本である現物主義(一般には現金主義)の確実性である。

 ちなみに、単式簿記では債権・債務の発生を認識できないという誤解が一部にあるので、ここでは、単式簿記を用いていた江戸の商人にしても、現在の日本国においても債権・債務は単式簿記で把握されているということも指摘しておこう。

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